ファシア療法を説明する際に、どうしても切り離せないのが、テンセグリティ構造です。
テンセグリティー(Tensegrity)とは、Tension(張力)とIntegrity(統合)という言葉を合わせた造語で、圧縮力と張力のつり合いによって構造が安定するシステムの事を指します。
圧縮材(動画の棒状の部分)のみの構造物は縦方向の負荷には一定の強度を得ることはできますが、ここに柔軟性のある張力材(ゴムの部分)を組み合わせると、力の逃げ道ができて負荷が分散され、より大きな衝撃に耐えられる弾力性や安定性を生むことができます。
またその際に、全体が連動協働して絶妙なバランスコントロールを可能にしているところも見落としてはならないポイントです。
さて実は、人の身体もこれに似た構造をとっているのをご存じでしょうか?圧縮材が骨、張力材がファシア(筋、筋膜、腱、靭帯等の軟部組織)とイメージすれば分かりやすいかもしれません。
もし何かがきっかけで1箇所でもトラブルが発生して可動制限がかかれば、動きの連動性・連続性が途切れ、衝撃吸収も激減、全体のバランスに歪みが生じ、最悪の場合、制限のかかっている箇所、あるいはそこから離れた関連箇所が壊れてしまうことがあります。
多くの筋骨格系の不調や反復性のスポーツ障害などは、まさにこのようなメカニズムによって起きているのかもしれません。
身体の安定性や身体運動の連動性・連続性、バランスコントロール、パフォーマンス向上、そして故障リスク・再発リスクを軽減させるためには、問題部位だけの治療や痛みのコントロールだけではなく、テンセグリティ構造を踏まえたファシア全体の健全性を維持するためのアプローチが非常に重要であると考えています。